No.23 冷徹な改革者(1530-34年)
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*冷徹な改革者(1530-34年) [#oa09f33e]
#contents
**第75代ドージェ(元首)レオナルド・バリラ・ロッキ [#j6bf...
1530年、ヴェネツィア市民には閉塞感が漂っていた。
先年の「オスマン帝国vs.オーストリア・ポルトガル連合」戦争...
オスマン帝国はヴェネツィア本領に近接した国となり脅威が増...
&size(13){(「[[No.22 オスマン侵攻と第2次ハンガリー侵略戦...
いざという時のことを考え海外への移住を希望する者も増えた...
リオデオロ、アルガン、シエラレオネへの入植はようやく軌道...
これ以上の植民地拡大は当面困難であった。
そして、肝心の交易面でも、他国が競争力や交易技術を向上(≒...
各地でヴェネツィア商人が交易競争に負ける事態が発生してい...
特に、インド・新世界からの商品は入植が先行しているカステ...
これらの商品を取扱うアンダルシア、リスボンでのヴェネツィ...
国力の低下を誰もが感じる中、ブラツィオ艦隊がザンジバルに...
情報が入ってくるようになったことだけが、明るい話題であっ...
&size(13){(「[[No.21 大航海時代(後編)(1515-34年)]]」...
そして年の瀬も迫る12月、第74代ドージェ(元首)アンセルモ...
して急死した。
オスマン帝国からの暗殺説も流れる中、ドージェに立候補した...
ロッキは改革の急進派として若い頃から知られ、その過激さゆ...
選挙演説での「ヴェネツィアをぶっ壊せ!」のキャッチフレー...
第75代ドージェに当選した。
**大改革 [#l3963221]
しかし、ドージェ就任後の10ヶ月間、ロッキは何の政策も行わ...
そのため、ヴェネツィア市民からは、
「批判だけは上手いが政治能力はゼロ」
「ヴェネツィア史上始まって以来の無能なドージェ」
と失望する声が日に日に高まっていたのだが・・・。
1531年10月20日、ロッキは突如声明文を発表し、ヴェネツィア...
「ドージェ就任以来10ヶ月、私は実効性ある改革を行うため...
本日、選挙公約に基づきヴェネツィアを強い国に変えるため、...
&color(olive,white){''<改革要綱>''};
''(1)我が国の主産業である胡椒の中継貿易、織物・ガラス...
''他国との価格交渉力を高めるため、各ギルドに専売権を与え...
''この政策により、海外での自由貿易政策を一層推進する。''
''(2)自由貿易政策に対する国内政策として、首都ヴェネツ...
''量を制限する''&color(olive,white){''『輸入法』''};((≪作...
''(3)''&color(olive,white){''『上告禁止法の布告』''};(...
''イタリア半島から教皇領が消えた今、宗教問題を教皇睨下に...
''今後、国家が睨下に変わり宗教問題を解決することとする。''
''(4)今後、『上告禁止法の布告』に伴い、宗教問題の解決...
&color(olive,white){''『教会税の導入』''};((≪作者注釈4:...
''また、『教会税の導入』の実施のために智謀家であり宗教家...
''臨時宗教顧問としての重責を担わせる。''
''(5)交易効率を高め各地での貿易競争に勝つために、''
''政治体制を『重商共和制』''((≪作者注釈5:重商共和制≫ヴェ...
たちまちヴェネツィア中が蜂の巣をつついたような大騒ぎとな...
特に、管理共和制への移行はこれまでの国家体制を否定するも...
元首公邸には連日のように陳情団が押しかけた。
しかしロッキに、
「わが通商同盟に新規加盟を希望する国がいなくなって60年((≪...
重商共和制に固執する理由はどこにあるのかね。」
と言われては言い返す言葉もなく、陳情団はすごすごと帰るし...
重商共和制を採用しないということは、通商同盟の解消を意味...
大改革発表から30日後、各地の交易拠点は全て閉鎖された((≪作...
&color(olive,white){''【交易拠点閉鎖】''};
#ref(./153111_交易拠点閉鎖.JPG,90%)
&color(olive,white){''【臨時宗教顧問】''};
#ref(./153110_顧問団.JPG,90%)
**遺志を継ぐ者 [#bf1270c7]
「ドージェ、ジャンピエロ・デ・ブラツィオがザンジバルで死...
「・・・病死か。」
「いえ、海賊の急襲を受け戦死とのことです。」
「そうか。帰国を決めた矢先だったのに彼も不運だったな。」
「偉大な航海者」ブラツィオ死亡の訃報が首都ヴェネツィアま...
報告を受けた日、ロッキは全ての予定をキャンセルしてサンマ...
感傷めいたことから全くかけ離れているこの男にしては、珍し...
次の日、ロッキは豪商のカルロ・エリッツォを元首公邸に招い...
「カルロ、来年1月から、国策『新世界の探索』を&color(olive...
十人委員会への根回しを始めてくれ。」
「国策変更は民意を得られず国が荒れるもと((≪作者注釈10:国...
悲しんでいる中、民衆の支持は得られますまい。」
(「冷徹な改革者」というのは的を射ている。)
カルロ・エリッツォは、誰が言い出したでもないロッキの渾名...
「カルロ、ジャンピエロ・デ・ブラツィオ氏がなぜインドへ行...
「え、ブラツィオは単なる調査家ではないのですか。」
カルロ・エリッツォは驚いて答えた。
「カルロ、君は商人のくせにジャンピエロ・デ・ブラツィオ氏...
知らないのかね。」
「はい、恥ずかしながら。」
「商業担当の顧問ならば、ブラツィオ氏が12年間政府に送り続...
彼は、1499年11月、バスコ・ダ・ガマのインド航海成功をリス...
インド方面の新規市場を開拓し商圏を拡大することが、ヴェネ...
もっとも、国家の支援や海洋技術が及ばずインドに到達するま...
彼の業績としてよく知られている新大陸の調査など、インドに...
「彼の情熱によって、中東・インド・東南アジアには有望な交...
ならば、何を言われようとも、交易効率を高め現地で貿易を行...
彼の遺志を継ぐために政治家としてできることではないのかね...
「遺志を尊重するなら、ブラツィオの後継者を指名する、とい...
「いや、これからは商圏拡大の時期だ。
それに、ブラツィオ氏以上の航海者は当分出てくるまいよ。」
ロッキは、首を振って沈黙した。
(ドージェの資質は優れた船長と同様『舵取り』にある、か。)
カルロ・エリッツォは一礼して元首執務室から退室した。
1534年1月、十人委員会は従来採用していた国策『新世界の探索...
『統一的交易方針』を採用すると発表した。
ブラツィオ艦隊がゼタに帰港したのは、翌月2月のことであった。
&size(13){(※ジャンピエロ・デ・ブラツィオについては「[[No...
----
&size(15){次話「[[No.24 交易政策の成功(1539-47年)]]」に...
&size(15){前話「[[No.22 オスマン侵攻と第2次ハンガリー侵略...
&size(15){タイトル「[[アドリア海の女王]]」にもどる};
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*冷徹な改革者(1530-34年) [#oa09f33e]
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**第75代ドージェ(元首)レオナルド・バリラ・ロッキ [#j6bf...
1530年、ヴェネツィア市民には閉塞感が漂っていた。
先年の「オスマン帝国vs.オーストリア・ポルトガル連合」戦争...
オスマン帝国はヴェネツィア本領に近接した国となり脅威が増...
&size(13){(「[[No.22 オスマン侵攻と第2次ハンガリー侵略戦...
いざという時のことを考え海外への移住を希望する者も増えた...
リオデオロ、アルガン、シエラレオネへの入植はようやく軌道...
これ以上の植民地拡大は当面困難であった。
そして、肝心の交易面でも、他国が競争力や交易技術を向上(≒...
各地でヴェネツィア商人が交易競争に負ける事態が発生してい...
特に、インド・新世界からの商品は入植が先行しているカステ...
これらの商品を取扱うアンダルシア、リスボンでのヴェネツィ...
国力の低下を誰もが感じる中、ブラツィオ艦隊がザンジバルに...
情報が入ってくるようになったことだけが、明るい話題であっ...
&size(13){(「[[No.21 大航海時代(後編)(1515-34年)]]」...
そして年の瀬も迫る12月、第74代ドージェ(元首)アンセルモ...
して急死した。
オスマン帝国からの暗殺説も流れる中、ドージェに立候補した...
ロッキは改革の急進派として若い頃から知られ、その過激さゆ...
選挙演説での「ヴェネツィアをぶっ壊せ!」のキャッチフレー...
第75代ドージェに当選した。
**大改革 [#l3963221]
しかし、ドージェ就任後の10ヶ月間、ロッキは何の政策も行わ...
そのため、ヴェネツィア市民からは、
「批判だけは上手いが政治能力はゼロ」
「ヴェネツィア史上始まって以来の無能なドージェ」
と失望する声が日に日に高まっていたのだが・・・。
1531年10月20日、ロッキは突如声明文を発表し、ヴェネツィア...
「ドージェ就任以来10ヶ月、私は実効性ある改革を行うため...
本日、選挙公約に基づきヴェネツィアを強い国に変えるため、...
&color(olive,white){''<改革要綱>''};
''(1)我が国の主産業である胡椒の中継貿易、織物・ガラス...
''他国との価格交渉力を高めるため、各ギルドに専売権を与え...
''この政策により、海外での自由貿易政策を一層推進する。''
''(2)自由貿易政策に対する国内政策として、首都ヴェネツ...
''量を制限する''&color(olive,white){''『輸入法』''};((≪作...
''(3)''&color(olive,white){''『上告禁止法の布告』''};(...
''イタリア半島から教皇領が消えた今、宗教問題を教皇睨下に...
''今後、国家が睨下に変わり宗教問題を解決することとする。''
''(4)今後、『上告禁止法の布告』に伴い、宗教問題の解決...
&color(olive,white){''『教会税の導入』''};((≪作者注釈4:...
''また、『教会税の導入』の実施のために智謀家であり宗教家...
''臨時宗教顧問としての重責を担わせる。''
''(5)交易効率を高め各地での貿易競争に勝つために、''
''政治体制を『重商共和制』''((≪作者注釈5:重商共和制≫ヴェ...
たちまちヴェネツィア中が蜂の巣をつついたような大騒ぎとな...
特に、管理共和制への移行はこれまでの国家体制を否定するも...
元首公邸には連日のように陳情団が押しかけた。
しかしロッキに、
「わが通商同盟に新規加盟を希望する国がいなくなって60年((≪...
重商共和制に固執する理由はどこにあるのかね。」
と言われては言い返す言葉もなく、陳情団はすごすごと帰るし...
重商共和制を採用しないということは、通商同盟の解消を意味...
大改革発表から30日後、各地の交易拠点は全て閉鎖された((≪作...
&color(olive,white){''【交易拠点閉鎖】''};
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&color(olive,white){''【臨時宗教顧問】''};
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**遺志を継ぐ者 [#bf1270c7]
「ドージェ、ジャンピエロ・デ・ブラツィオがザンジバルで死...
「・・・病死か。」
「いえ、海賊の急襲を受け戦死とのことです。」
「そうか。帰国を決めた矢先だったのに彼も不運だったな。」
「偉大な航海者」ブラツィオ死亡の訃報が首都ヴェネツィアま...
報告を受けた日、ロッキは全ての予定をキャンセルしてサンマ...
感傷めいたことから全くかけ離れているこの男にしては、珍し...
次の日、ロッキは豪商のカルロ・エリッツォを元首公邸に招い...
「カルロ、来年1月から、国策『新世界の探索』を&color(olive...
十人委員会への根回しを始めてくれ。」
「国策変更は民意を得られず国が荒れるもと((≪作者注釈10:国...
悲しんでいる中、民衆の支持は得られますまい。」
(「冷徹な改革者」というのは的を射ている。)
カルロ・エリッツォは、誰が言い出したでもないロッキの渾名...
「カルロ、ジャンピエロ・デ・ブラツィオ氏がなぜインドへ行...
「え、ブラツィオは単なる調査家ではないのですか。」
カルロ・エリッツォは驚いて答えた。
「カルロ、君は商人のくせにジャンピエロ・デ・ブラツィオ氏...
知らないのかね。」
「はい、恥ずかしながら。」
「商業担当の顧問ならば、ブラツィオ氏が12年間政府に送り続...
彼は、1499年11月、バスコ・ダ・ガマのインド航海成功をリス...
インド方面の新規市場を開拓し商圏を拡大することが、ヴェネ...
もっとも、国家の支援や海洋技術が及ばずインドに到達するま...
彼の業績としてよく知られている新大陸の調査など、インドに...
「彼の情熱によって、中東・インド・東南アジアには有望な交...
ならば、何を言われようとも、交易効率を高め現地で貿易を行...
彼の遺志を継ぐために政治家としてできることではないのかね...
「遺志を尊重するなら、ブラツィオの後継者を指名する、とい...
「いや、これからは商圏拡大の時期だ。
それに、ブラツィオ氏以上の航海者は当分出てくるまいよ。」
ロッキは、首を振って沈黙した。
(ドージェの資質は優れた船長と同様『舵取り』にある、か。)
カルロ・エリッツォは一礼して元首執務室から退室した。
1534年1月、十人委員会は従来採用していた国策『新世界の探索...
『統一的交易方針』を採用すると発表した。
ブラツィオ艦隊がゼタに帰港したのは、翌月2月のことであった。
&size(13){(※ジャンピエロ・デ・ブラツィオについては「[[No...
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&size(15){次話「[[No.24 交易政策の成功(1539-47年)]]」に...
&size(15){前話「[[No.22 オスマン侵攻と第2次ハンガリー侵略...
&size(15){タイトル「[[アドリア海の女王]]」にもどる};
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