プレイレポ/ボルジアの血族

第一章へ

Lucretia_Borgia_Pinturicchio.jpg
伝 ルクレツィアの肖像画

「――もう、私に何処かへ嫁せと命じたりしない?」

「ああ。お前はもう手放さない。私だけのものだ」

この夏、猛暑によりフェラーラにて疫病が巻き起こり、 フェラーラ公エルコレ一世、嫡子アルフォンソが相次いで急死、 公位はエステ家傍系の手に帰する。

これにより、アルフォンソの妃であったルクレツィアは兄チェーザレの元へと戻ってきていた。

以降のチェーザレは、過去あれほどに好んでいた遊興への自身の参加をぴたりと止める。

数年後、ウルビーノの宮廷には、 彼の弟ホフレとナポリ王女サンチャとの間の遺児、との触れ込みで フェデリーゴと名付けられた幼い少年が出入りするようになる。

その利発さと美しい容姿とは、周囲の誰からも愛されたという・・・・・・

第一節

チェーザレと公妃シャルロット・ダルブレの間には男子が一人産まれたが早世している。

後継者の死.jpg

そのため、チェーザレは生前より公国の後継者として甥フェデリーゴを指名し、 またその成人までは妹ルクレツィアが摂政として治めるように、との布告が為されていた。

チェーザレ生存中のルクレツィアと政治との関わりは薄く、 短期間の都市の代官を務めた経験が数回ある程度だったが、 兄の死に際し、ルクレツィアは意外なほどの統治の才を示した。

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混乱する家中を統率し、兎にも角にも崩壊無しにウルビーノ公国を纏め上げている。

ホアン、ホフレと言ったチェーザレの弟達は兄よりも先に死んでおり、 イタリアに移ってきてまだ歴史が浅いために親族の殆どがスペインに居るボルジア家には、 簒奪を目論めるような成年男子が居なかったことが逆に幸いしたとも言えるのであろうか。

第ニ節

チェーザレの急死後、外交情勢が大きく変化した。

マントヴァは直ちにロマーニャ諸都市への侵蝕を開始し、 ヴェネツィアも先年の雪辱を晴らすべくウルビーノに対し宣戦布告した。

然しながら、これらに呼応しての反乱はごく小規模なものに留まり、即座に鎮圧されている。

ヴェネツィアの間諜は盛んに「圧制者の死に際して反旗を翻し、イタリアの自由を取り戻そう!」と喧伝したが、 殆どの都市では効果を挙げなかった。

先年の反乱者達の末路が無残と言う他に形容しようもないものであったことに加えて、 ヴェネツィアが彼らを使い捨てたのは紛れもない事実であったからかも知れない。

また、チェーザレ生前の外交交渉が――尤も、それは皇帝が永きに渡る対ボヘミア戦争を行なっていることに浸け込んだものであったが―― 功を奏したのと、既に老齢であった皇帝マクシミリアンが病床に伏し、 後継者であるカールは皇帝選挙での買収のための金策に奔走していたため、

予想された中での最大の悪夢、皇帝によるイタリア遠征は為されなかった。

さりとて、眼前の脅威が去ったわけではない。

ヴェネツィア軍は既にヴェローナでの敗戦での損害から回復しており、 まして今回は、前回同盟軍であった歴戦のマントヴァ軍までもが敵に回っている。

主君を失った直後のウルビーノ軍のみでは到底抗し得なかったことだろう。

第三節

発端が北方の争いであった敵対関係を収めたのは、 これも北方の争いであった。

この頃ルイ12世が没し、新たにフランス王に即位したフランソワ1世は 百年戦争後、未だにイングランド領として残っている カレー市を奪取すべく軍事行動を起こし、

これに伴ってイングランドの同盟国であるヴェネツィアにも攻撃を仕掛けた。

フランス全土の統一に加えて、かつて独立国として勢威を誇った ブルゴーニュ、ブルターニュ両公国をも膝下に従えているフランスに対して ヴェネツィアでは到底敵せず、

ヴェネツィアからの賠償金、 対ナポリ戦役におけるヴェネツィア海軍の支援、 イングランド-ヴェネツィア間の同盟の破棄、

以上の三点を条件として和睦している。

第四節

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ヴェネツィア軍がフランス軍に粉砕されたため、 ウルビーノの敵はシエナとマントヴァのみに絞られた。

元々彼らの動きはヴェネツィアによる援助を前提としてのものであったため、 暫くの包囲の後に降伏。

シエナは直接反抗を企てた指導者の追放と従属とは余儀なくされたものの、 都市共和国としての存続は許されることとなった。

だが、マントヴァは違った。

処刑されたフランチェスコ2世

領土は直接に併合され、逃亡する侯爵一家は囚えられた後、 子女に至るまで例外無く処刑され、晒されている。

記録によれば、処刑にはルクレツィアが直々に立会い、 かつての友情を訴えて助命を願うフランチェスコを、 その死に至るまで極めて冷ややかな目で見つめていたという。

チェーザレ没後のルクレツィア.jpg
チェーザレ死後のルクレツィアは悲しみに沈み、喪服を脱ぐことは無かったと伝わる

第五節


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