伝 ルクレツィアの肖像画
「――もう、私に何処かへ嫁せと命じたりしない?」
「ああ。お前はもう手放さない。私だけのものだ」
この夏、猛暑によりフェラーラにて疫病が巻き起こり、 フェラーラ公エルコレ一世、嫡子アルフォンソが相次いで急死、 公位はエステ家傍系の手に帰する。
これにより、アルフォンソの妃であったルクレツィアは兄チェーザレの元へと戻ってきていた。
以降のチェーザレは、過去あれほどに好んでいた遊興への自身の参加をぴたりと止める。
数年後、ウルビーノの宮廷には、彼の弟ホフレとナポリ王女サンチャとの間の男子、との触れ込みで幼い少年が出入りするようになる。
その利発さと美しい容姿とは、周囲の誰からも愛されたという・・・・・・