鄭和がひさしぶりにマラッカを訪れると、 パラメスワラくんが顔をかかえてワンワン泣いていました。
やあ、パラメスワラくん。どうしたんだい? どうせ女性にでもフラれたんだろう。だけど、フラれた原因がその醜い顔にあるんだなんて、勘違いしちゃあいけないよ。きみの独善的な性格こそが、きみが女性に嫌われる一番の原因なんだからね。
勘違いによる決め付けでそこまでいう鄭和さんこそ、モテなさそうな性格をしていると言えるでしょうね。どうせ鄭和さんには悲しみに暮れる心なんてないんでしょうよ。
いやいや、私だってついさっきまで心が張り裂けそうなくらい悲しい気持ちだったが、きみが泣いているのを見て、ふふふ、気持ちが晴れやかになったのさ。
というのも、マジャパヒト王国を屈服させのにぼくにかけられた呪いが解けていないんですよ。
ぼくはいつまでオランウータンの格好をしなければならないのでしょうか。
その話なんだがね、きみに呪いをかけた魔法使いは、マジャパヒト王国が降伏する直前、ジャワ島から逃げ出して、はるか東の大陸に逃げたという話なんだよ。
ところで、鄭和さんは何故悲しんでいたのですか? ぼくも言ったんだから、教えてくださいよ。
じつはね、私のパトロンである明の皇帝が先日崩御されてね。外戚の連中が大航海なんていう金のかかる馬鹿げた事業は即刻中止せよと、裏工作をやっているらしいんだ。おかげで私の宝船艦隊は港に抑留されて、一部は解体、次の航海はいつになるか分からないという体たらくなんだ。